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タレント

相田みつお美術館 館長 相田一人

タレント, 経営者

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雨の日には・・・相田みつをの生き方
~相田みつを美術館・館長、相田一人さんを迎えて~

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは、相田一人さんのインタビューです。

相田一人さん

 相田みつを美術館の館長、相田一人(あいだ・かずひと)さんをお迎えし、書家であり詩人、そして父親であった相田みつをさんの人となりや自然観についてうかがいます。

筆1本で生きた書家、相田みつを

相田みつを美術館・入り口

●今日は東京国際フォーラムの地下1階にある相田みつを美術館にお邪魔をしてお話をうかがっていきたいと思います。現在、こちらの美術館では夏休みに合わせて「雨の日には・・・相田みつをの生き方」という企画展が行なわれているんですけど、これは、相田みつをさんの作品の中の「雨の日には雨の中を 風の日には風の中を」という詩をテーマにしているものなんですよね?

「そうです。初めての試みなんですけど、相田みつをの作品というのが、今現在、ご存じない方よりもどこかでご覧になった方のほうが多いと思うんですね。相田みつをと意識をしなくても、トイレ用の日めくりなんてありますので、トイレの中で見たことあるっていう方も多いと思います。それなりに知られてはいるんですけど、その相田みつをという人間が、どんな生き方をしたのかっていうのは、あまり知られていないんですよね。ですから、その生き方に焦点を絞った企画展なんですけど、父の生き方を一言で言い表す言葉はなんだろうなぁって考えた場合、やはり『雨の日には雨の中を 風の日には風の中を』っていう言葉こそ、父相田みつをの生き方をズバリ表したものだろうと思って、今回の企画展のタイトルにしたんですね」

●相田みつをさんの生き方を表した詩を選んでいるのが息子さんの館長だということは、お父さんの生き方像というのを、息子としてどのように感じていらっしゃいますか?

相田みつを美術館・アトリエ再現
再現された相田みつをのアトリエ
相田みつを美術館・詩の草稿
詩の草稿
相田みつを美術館・包装紙展示
副業として唯一行なった包装紙作り

「父は筆1本で生きたんですね。それも、若い頃に友人、知人、家族に対して『自分はこれからは筆1本で生るんだ』っていうことを宣言したらしいんですよ。ハッキリと言ったらしいんですね。で、その筆1本で生きるという意味は、副業は一切持たない、つまり、作品を書いて、展覧会を開いて、そこで売って収入を得る以外の収入を求めないという、ある意味ではハードな生き方なんですよね。
父の場合は、国語の教員になる資格っていうのがあったらしくて、『学校に勤めながら書いたらいかがですか?』て言って下さる親切な方もいたそうなんですね。それから書家ですから、『書道塾のようにお弟子さんを取るとか、そういうことをやれば収入が増えるんじゃないですか?』とか、『色々な意味で副業を持ったらいかがですか?』って言ってくださる方がいたんですが、父は一切拒否したんですね。理由はハッキリしていまして、自分は弱い人間なんだと。弱い人間だから、筆以外に収入があると、必ずそれに頼って甘えてしまうっていうんですね。で、その甘えが絶対、書に出てしまうんだと。いい書が書けなくなってしまうから、自分は副業を持たないという意識がハッキリとあったんですね。なので、展覧会を開いて書を売るという生活に徹したんですけど、書は売れないんですよね(笑)。ですから、本当に大変な生活だったと思います。それは子供心にも分かりまして、我が家は大変なんだろうなぁっていうのはあったんですね。ただし、父が自分の納得がいく書を書くためには、そういう生活を選択せざるをえないんだろうなぁっていうのがなんとなく分かったんですよね。ですから、生活面では大変だったと思いますね。そういうものがあって『雨の日には雨の中を 風の日には風の中を』っていう言葉が生まれてきたことは間違いないですよね」

●「雨の日には雨の中を 風の日には風の中を」の詩に合わせて曲ができたそうですね。

「はい。これも、色々なご縁でして、父の生き方そのものといっていい『雨の日には雨の中を 風の日には風の中を』という詩をタイトルにした、それから父の作品をベースにした同名の歌を島谷ひとみさんが歌ってくださっているんですよね」

●それではここで、その曲を聴いてみたいと思います。

(放送ではここで、島谷ひとみさんの「雨の日には雨の中を 風の日には風の中を」がオンエアされました)

親の大事な務めは、子供の心に“感動する心”を養っておくこと

●相田家は栃木県の足利市にお家があって、相田みつをさんは毎朝、裏山に散歩に出ていたそうですね。

相田みつを美術館・筆
相田みつを美術館・印
愛用していた筆や硯、そして「み」という印

「はい。栃木県の足利市というところは、産業的にはあまり発展しなかった町といっていいと思うんですけど、その反面、自然の豊かさがまだまだ残っているんですね。渡良瀬川という川がありまして、よく父は散歩に行ったりしていたんですけど、八幡山古墳群という古墳があって、その一角に我が家があったといっていいんでしょうかね。ですから、家を出るとすぐ古墳の山が続いているんですね。で、父は昼間も書いていたんですけど、エンジンがかかってくるのが夜なんですね(笑)。私もそうなんですが夜型なんです。夜10時から11時くらいからエンジンがかかってくるんでしょうかね。12時すぎて、2時から3時くらいまでは絶好調でしょうね。静かな状況じゃないと集中できないので、夜中を好んだんです。4時か5時くらいになるといったん筆を置くんですけど、すぐ休むってわけにはいかなかったみたいですね。エンジンを切ってもすぐに冷えないのと同じで、書いていますので、興奮状態がさめないので、それを冷ます意味もあって毎朝必ず散歩に出たんですよ。夏でも冬でも早朝、散歩をするんですね。人が1人もいない静かな古墳をゆっくりと散歩して、その中で詩を考えていたようなんですね。ですから、ある意味では非常に集中して自分の思いに全身で浸れるといいますか、そういう早朝の静かな古墳が父にとって不可欠なものだったんでしょうね。
母がよく思い出話に言うんですけど、父は家庭を持っていた人間ではあるんですよね。子供も私と妹の2人がいて、母と父の一家4人ですね。母が言うには、家庭のことを考える人間だったら、こういう言葉は残さなかったって言うんですね(笑)。とにかく父にとって家庭も頭の隅にはあったと思うんですけど、優先順位がハッキリしていましてね。『一番大事なものに、一番大事な命をかける』っていう書を若い頃から盛んに書いていまして、父にとって一番大事なことっていうのは、明らかに書なんですよね。ですから、意識の中に家庭というのもあったと思うんですけど、まずは書が第1ですから、自分が一番書に打ち込める環境を作ったわけですね。で、仕事場も広いものを作ったわけです。それから、自分が一番集中できる時間帯、深夜に書くわけですね。ですから、ある意味では見事なくらい、自分中心ですよね(笑)」

●日本男児らしいといえばらしいんじゃないですか(笑)。

「そう・・・、ですね(笑)。それで家庭が成り立っていたんですけど、そういうことができた最後の世代じゃないでしょうかね(笑)。今は不可能だと思いますけどね。見事なくらい自分中心だったので、ある意味では爽やかな感じはしますけどね(笑)。中途半端ではなかったですね。父が子供を育てている中で、作った作品が1つあるんです」

うつくしいものを 美しいと思える あなたの こころが うつくしい
(©相田みつを美術館)

「という作品なんです。これは父がよく言っていたことで、親が子供を育てていく中で、子供が小さいうちに色々なことを教えていかなくちゃいけないんだけど、その中でも自分が一番大事だと思うものが『美しいものを美しいと思える心を、子供の心の中に養っておくことだ』って言うんですね。それはなぜかというと、これは父の考えなんですが、美しいものを見て素直に感動する心というのは、反対に言うと、戦争や犯罪、いじめを見たり聞いたりしたときに、『これはいけない』、『これは間違っている』と瞬時に分かる心だっていうんですね。ですから、子供の心の中に美しいものを見て『いいなぁ』と感動する心を養っておくことが、親の大事な務めなんだと。その先がユニークなんですね。どうしたら子供の心の中にそういうものが芽生えるかというと、明快なんですけど、まず、親が感動しないとダメなんですね」

●その通りですよね!

「そうですよね。親が感動すれば、その思いっていうのは必ず子供に伝わっていって、子供の心の中に『美しいものを美しいと思える心』が芽生えるんじゃないかっていうのが、父の体験的な子育ての考えだったと思いますね」

相田みつをさんの自然観

●相田みつをさんの作品を通して、毎朝の散歩の中でこういう言葉が浮かんできたのかなぁと思うような自然をモチーフにした詩もたくさんあるんですけど、いくつか館長に読んでいただいてもよろしいですか?

「例えば、こういうのがあるんですね」

土水空気 にんげんのつくったものじゃねんだよなあ
(©相田みつを美術館)

●そうなんだよなあ。

「これは言葉で聞くとピンと来ないかもしれないですけど、独特な書体を思い浮かべていただくと、なんとなく『なるほどなぁ』と思っていただけるんじゃないかと思うんですね。父はよく『土、水、空気というのは、人間がどう頑張ったって作れないものなんだ、それを人間が使わせてもらっているわけなんだから』っていうことをよく言っていまして、そういうことから、父の言葉でよく『おかげさん』という言葉が出てくるんですけどね。そういう『おかげさん』という父の思いにも『土水空気 にんげんのつくったものじゃねんだよなあ』って言葉に繋がっていくと思いますね」

●他にはありますか?

「『種』という詩があります」

種子さえ蒔いておけば いつかかならず芽が出る よいたねにはよい芽が 悪い種子には悪い芽が 忘れたころにちゃんと出てくる
(©相田みつを美術館)

「私はこの『忘れたころに』というのが面白いなぁと思うんですね。答えを性急に求めがちな時代ですよね。『こういうことをしたんだから、こういう答えが返ってこなければおかしいじゃないか』みたいな風潮があると思うんですけど、やっぱり結果っていうのは忘れたころに出てくるんだなぁと思いますね。私、若いうちはこの言葉がピンと来なかったんですけど、今、52歳になるんですけど、40歳を過ぎたくらいから、結果が出るには時間がかかるんだなぁというのをだんだん分かってきまして、今読むと面白いなぁと思いますね」

●現在の環境問題に置き換えても、今は悪い種子がすごく出ちゃっているなぁって感じですもんね。

「それはありますね」

●今こそ「土水空気 にんげんのつくったものじゃねんだよなあ」っていうのを、かみしめなきゃいけない時代になってきていますよね。

「父が土、水、空気っていうのを非常に大事にしたのは、1つは父の作品の中のキーワードなんですけど、『根』という言葉に繋がるんですね。こういう作品があります」

花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根は見えねんだなあ
(©相田みつを美術館)

「これは父の原点にあるような考えなんですね。木でいえば幹や枝は誰が見てもすぐに分かるけど、目に見えている部分より、目に見えない根の部分がいかに大事かっていうことなんですよね。ですから、父は目に見えないものに非常に心を凝らしたっていうところがありまして、『根』という一文字なんですけど、これがやがて『命の根』なんていう言葉に繋がっていくんですね。で、その『命の根』を育てるのが土、水、空気であり、『雨の日には雨の中を 風の日には風の中を』に出てくる雨や風なんだと思うんですね」

●生前、相田みつをさんは自然に対してこのように語っていらっしゃいます。

相田みつを美術館・相田みつをさんパネル

みつをさん「本当は自然の中に包まれて生きているのが本来の人間だと思うのね。自然に向かい合って静かにして、心が静かに落ち着いてくると、山の音も聞こえてくる、谷の川のせせらぎも聞こえてくる。それは、こちらの受け入れ側が静かにならなければ聞こえないんですね。損だ得だというあくせくした世界を汚れた世界というんですけど、心が汚れていると、聞こえるものも聞こえない。それから、見えるものも見えない。自然の山に向かい合っていると、自然に聞こえてくるんですね。自然にっていうことは、人間の作為がないということね。自然を見ているとほっとしますねぇ」

(自然の音に耳を傾ける相田みつをさん)

みつをさん「いいねぇー。目に見えないものがいかに尊いか。私一人の命を生かすために、多くのものが人が働いてくれている。そのおかげの上に私は生かされている」

相田みつをさんの作品のテーマは“人間の命”

●ここで、この番組の趣旨に沿って選んだ、相田みつをさんの詩をいくつかご紹介しましょう。あなたなりのイメージを広げながら、じっくりとお読みください。

道は一本 単純で まッ直ぐがいい 何かを欲しがると 欲しがったところが 曲がる 道は一本 まッすぐがいい

素足で土を 踏んでごらん 思いもかけぬ 土の冷たさが 足の裏に じかに伝わるから

素足で土を 踏んでごらん ふんわりとした 土のやわらかさが 足の裏に 春のぬくもりを じかに伝えてくれるから

素足で土を 踏んでごらん 土の中に埋まってゆく 足の指の間から 眠っていた 大きなみみずが 飛び出したりして びっくりすることも あるから

素足で土を踏んでごらん 靴やクツ下をはいていたんではダメ 素足でなければダメ

素足で土を踏んでごらん 素足と土との じかのふれ合いが できるから 長いこと忘れていた 人間と土との じかのふれ合いが できるから

素足で土を踏んでごらん 素足で土を踏んでごらん

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

そらもゆうやけ みずもゆうやけ かえりゆく わたしも つばめも ゆうやけのなか

いろいろ あるんだな にんげんだもの いろいろ あるんだよ 生きているんだもの

(©相田みつを美術館)

★        ★        ★

●こちらの美術館には、若い人からお年を召した人まで、幅広い層の方がじっくりと1枚1枚の書に目を通していらっしゃるんですが、今、相田みつをさんの作品がここまで幅広い世代に受け入れられているのは、なぜだと思われますか?

相田みつを美術館・展示

「私も考えてみると不思議だなと思うんですけどね。父は17年前の1991年、平成3年に67歳という若い年齢で亡くなっているんです。亡くなってはいるんですけど、父の言葉というのは、亡くなった後のほうが広く読まれるようになっていまして、どうしてなのかなぁと思うんですけどね。1つは、父の作品のテーマっていうのは、ズバリ言えば人間の命ということになると思うんですけど、今の時代、人間の命というものが大事にされているかというと、そうでもないんですよね。特にこの間、秋葉原であった無差別殺人のような事件とか、子供が親をとか、親が子供をというような、考えられない事件がたくさん起こっていますよね。ですから、頭では命の大切さっていうのを分かっていると思うんですけど、現実はそういう方向にいっていないんじゃないかっていう気がして仕方ないんですね。そういう中で、逆に命というものをテーマに据えた父の作品っていうのが、存在感を増してきているのかなっていう感じがするんですね」

●「雨の日には・・・」の雨のしずくの丸には、相田みつをさんが「全てはこの丸の中に入っているんだ」ってこだわって書かれていたものなんですよね?

「ええ。円というのは、見た目は何もないですけど、円の線が充実感を持って書ければ、円の中身も充実してくるんですね。中身が充実してくると、円の外側も充実してくると。ある意味では、1本の線でそれを表すわけですから、ものすごく難しいことらしいんですけどね。そういう世界を求めていた父のテーマ・ソングみたいなものが、『雨の日には雨の中を 風の日には風の中を』なんですね。今の企画展も是非、ご覧いただければと思います」

●今日はどうもありがとうございました。

それでは最後に、相田みつをさんの詩の中から、ザ・フリントストーンとしては、この詩をお届けしたいと思います。

土水空気 にんげんのつくったものじゃねんだよなあ
(©相田みつを美術館)

AMY’S MONOLOGUE~エイミーのひと言~

相田みつをさんの書や詩は、作品によっては自分の心の声を代弁してくれ、また、作品によっては自分の気持ちを理解してくれた上で別の解決方法を示してくれる。そして時には見過ごしてしまっている大切なものに気づかせてくれたり、導いてくれる・・・。今回、息子さんでもある相田一人さんにお話をうかがって初めて、相田みつをさんのことがほんの少しだけわかった気がします。できればご本人にお会いし、一緒に自然の中を歩かせていただいてお話をうかがいたかったです。ただ、相田みつを美術館の館内は生前、相田みつをさんが毎朝散策したという古墳の山をイメージして作られているだけあって、本当にくつろげる場所です。皆さんもぜひお出かけになって、相田みつをさんの世界に浸ってみてくださいね。

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